損失回避の法則とは「人は、得をすることよりも損をしないことを選ぶ」という心理傾向のこと。
人は「得に対する喜び」よりも「損を被った際の痛み」を大きく感じ、「〇〇が欲しい」などの欲望があってもすぐに行動を起こそうとはしないのに対して、「〇〇を失う」などのリスクを感じると、それを防ぐための行動はすぐに起こすことが多いとされている。
また、個人の性格や置かれた環境、社会の慣習、国民性などによっても差があるものの、一般的にはリスクを負ってでも利益を狙う行動は起こしにくいとされている。
マーケティングシーンにおいて損失回避の法則は、販売促進の施策に多く活用されている。
「モノを買う」ことは、購入した後のこと(未来)の予測が必要であり、それは、”損”があるかもしれないという考えが生まれる。そこで、販売促進では以下のような心理誘導を狙う。
もともと不満や不利益(損)がある状態を想定し、商品やサービスを利用することで、その損が解消できることをアピールする。
・誰もが逃れられない損失(老化など)を回避する商品やサービス
・ターゲット自身に今現在、損失があると気付かせるメッセージ
・定期購入者への永続割引き
商品やサービスを使わなかった場合のデメリット(損)や、購入者の特典が限定であることなどをアピールする。
・今だけの特別価格、購入特典
・今しか買えない数量限定、期間限定販売
・ポイントなどの特典の権利失効
購入した時に満足できなかったり、失敗すること(損)を恐れる気持ちを払拭できるようにする。
・品質保証の返金システム
・無料のお試し期間
・初回限定価格
宝くじのコピーのエピソード
※出展:「相手を思いのままに心理操作できる」デビット・リバーマン著)
(A)あなたもきっと当選者になれる
(B)あなたはすでに当選者かもしれない
AのコピーをBにコピーに変更したところ、大幅に売り上げが伸びた。
(A)のように得を求めるものよりも、(B)のようにすでにあるチャンスや利益を逃してしまうかもしれないという、失うリスクを感じさせるほうが行動を起こしやすいという例。
その他の例
・このサービスを利用すると、毎月〇〇円の得になります。
・このサービスがないと、毎月〇〇円を失い続けます。
人は、自分が購入しようとする商品やサービスに対し、「あの商品はいつもこのくらいの値段で買える」というような「参照価格(=自分なりの基準)」を持っている。
割引を常に行うと、ターゲットとなる消費者が低価格(=お得な価格)に慣れてしまい、参照価格が下がってしまう場合がある。
参照価格が低下しないように、割引や特典については長期的な利益や影響を考慮して設定することが重要である。
損失回避の法則を効かせるために「損失」を強調すると、メッセージにネガティブ表現が多くなり、商品やブランドのイメージを低下させる場合がある。