ザイオンス効果は「同じ人や物事に繰り返し接触すると、親近感が増したり好印象を持つ」という心理現象で、単純接触効果とも呼ばれる。
1968年にポーランド出身の心理学者、ロバート・ザイオンス氏が論文によって発表した。
知らないものは警戒感から受け入れづらいのに対して、知っているものは受け入れやすくなるという基本理論に加えて、ザイオンス効果のポイントは、もともと関心がなかったモノや人でも、何度も目にしているうちにだんだんと好印象をもつようになるという点である。
マーケティングの戦略において「認知と同時に親近感を強める」という狙いは欠かせないものである。
そして”繰り返しの接触”は、今までにも広告や営業のシーンで多く実行されている手法であるが、ザイオンス効果を狙った施策には注意点もある。
一般的にザイオンス効果は「興味がなかった人」に好感を生み出せる可能性があるものの、はじめからマイナス評価を持っている人には効果がないとされている。
「繰り返しの接触を嫌う人がいる」、「一度悪い印象を持たれてしまうとむしろ印象がさらに悪化していく」などがそのリスクである。
ザイオンス効果を発揮するには、繰り返しの接触に不快感を感じず、知らないうちに身近な存在や習慣的な行動になっていくのが理想である。
しかし、前述のようなリスクもあることから、相手(ターゲット)の状況や嗜好を考慮しないむやみな多接触は逆効果。
また現代は、くり返しの接触をターゲット側がブロックできる仕組みも多くある。インターネット環境でのブロック機能、郵便DMの拒否なども一般的になっている。
むやみな繰り返しではなく、ターゲットの欲求をどれだけ適切に読み取り、”嫌がられずに繰り返し接する”ことができるかどうかがカギとなる。
ターゲットとの接触頻度を上げる取り組みの例を挙げる。
SNSはザイオンス効果と相性がよい媒体。
SNSで発信者がフォロワーやチャンネル登録者などを重視するのは、それが繰り返しの接触を生み、さらには習慣や愛着によってファン化につながるからである。
今のSNSプロモーションは、プロモーション色を目立たせず、ユーザーの日常生活や気持ちに寄り添うような情報で接触機会を積み上げ、好感度向上を目指す例が多くなっている。
対象商品や企業の情報に触れたことのあるユーザーを追跡して繰り返し広告を配信する仕組みがリターゲティング広告である。
リターゲティング広告は、ザイオンス効果が現れやすい代表的な手法で、繰り返し広告を表示することで印象を強めている。
ザイオンス効果を狙った昔からの王道施策がテレビCMである。テレビCMは短期間に集中して情報を投下し、視聴者の商品に対する認知度や親近感を一気に高めることを狙っている。
キャンペーンや新着情報などを通知してアプリを開く回数を増やすことで、アプリとの接触回数が高まり、結果的に好感度や親近感を高めることに繋がっている。
リピーターの獲得ともに顧客との距離を縮める施策として、昔から多くの企業・ブランドが利用している手法。ただし、ユーザーの意志によって開封・閲覧されなければならないので、その開封率は重要な指標となる。