アンカリング効果とは、先に得た数字やデータが無意識に印象に残り、その後の意思決定や行動に影響を及ぼす現象のこと。
人はある情報を先に見ると、その値を基準として考え、後に見た情報を比べて判断をすることが多くある。これは特に対象となる物事を熟知していない人ほど、客観的な判断ができないことから、自分の中で基準となる情報を早く見つけたくなることで生まれる心理効果と言える。
また、すでに基準値を持った人でも、一度得た情報は更新しづらく、自分の過去の情報や価値観が強く働き、時代や環境に合わせた新しい判断ができなくなることも多い。
※アンカリング(Anchoring)とは、錨(いかり:Anchor)で船を係留すること。つまり、最初に得た情報が錨で係留させるように、意識の中で固定されてしまうことからこの名前がついている。
数値化できる情報は、アンカリング効果の活用によく利用され、その数値としては、平均値、定価、過去の記録などがある。
例)
テストの点数・・・”平均値”と比べて、自分の点数が上か下か
商品の価格・・・「定価」と比べて、どのくらい安いか
一般的にテスト点数の平均値は中央値とは異なり、順位の判断には最適ではない。また、商品の価格も、”定価”は販売主が独自につけた価格であり、商品の性能や品質からみた適正価格とは限らない。しかし、多くの人はこのような数値を求めたがり、この数値は人々の「アンカー(基準値)」になりやすい。
割引販売をするときに「当店通常価格」として割引前の価格を表記する方法で、販促の場面では多く行われている基本的な手法。
例)
・「当店通常価格」が判断の基準値としてアンカリングされ、それ以外の値を、高い・安いと判断するようになる。
・割引前後の価格差が大きいほど、実際の価格に関わらず『これはお得なんだ』という印象を強めることがある。
例)定価10万円→1万円 ※5000円の類似商品があっても90%OFFがお得に感じる。
「当社比●●%アップ」「当店一番人気」など、性能や人気の高さを比較・順位付けできるような内容で示す。
例)
・どれを選んでよいか迷う時、よりお得、より人気なものを選びたいという心理から、実際の商品特徴がわからなくても、他より優れているように見える。
シャルパンティエ効果は、数値の単位などが変わることで、値が実際よりも大きく(小さく)感じられる効果。
マーケティングのシーンでは、商品を紹介する時に、成分の含有量や重さ、価格などをより印象的にみせるように、都合のよい単位が使われている。
例としては、「ビタミンCが1000ml(=1g)」「1年で3650円(=1日10円)お得」などがある。
アンカリング効果と合わせて使うことで、基準値からの変化を大きく(または小さく)見せる効果もある。
最初に得た情報が強く印象に残り、その印象が後の判断に影響してくるのが初頭効果。
最初の情報を基準にして物事を判断するアンカリング効果と現象は似ているが、マーケティング施策においての使い方は、方向性が異なる。
アンカリング効果は価格表示などで、最初に得た(基準となる)数値よりも「良い印象の数値」を示すことでその差を印象づけるが、初頭効果は、最初に良い印象を与えることで後からの情報に対しても、最初の好印象を維持させることを狙う。
アンカリング効果は、消費者にとっては有益な情報になる場合もあが、故意に判断を誘導するような演出することは、訴求対象者に利益をもたらさないだけでなく、印象悪化を招くこともある。
標準価格の表示はアンカリング効果の定番的な手法だが、現在では、通常価格を実際よりも高く表記することは、二重価格の不当表示として景品表示法の違反にあたる場合がある。