カスタマーサクセスとは、「顧客の成功が未来の売り上げを作る」と考えるマーケティング概念です。
この顧客の成功とは、顧客自身が感じる満足ではなく、確実な結果や利益、成長、今までなかった良い変化などを指しています。
カスタマーサクセスは、「お客様のためになること」「お客様が喜ぶ」ことであることは確かです。
そこで、似た概念に「カスタマーサティスファクション(顧客満足)」や「カスタマーサポート」があります。
カスタマーサクセスは、これらと同じ要素の部分もありますが、カスタマーサティスファクションやカスタマーサポートは、顧客自身が満足・納得すればゴールであるのに対して、カスタマーサクセスは、より客観的に利益や良い結果が生じているかどうかであると言えます。
また、事業主側からみて、売上などの業績アップにつながっているかが重要です。
つまり、お客様が喜べば結果が出なくても良い、売上があがらなくても良い、損をしても良い、というものではないということです。
世界の先進国と言われる国々は、すでにモノやサービスは溢れていて、多くの消費者にとって選択肢は多くあります。
そのような状況で、消費者(顧客)は、はじめに自身の感覚で満足を得た気分になっても、その先により高い成功や結果が出ないと、満足度が徐々に失われていき、その商品への評価を下げていきます。
顧客に「その先の成功や結果」までも提供し続けなければ、顧客をつなぎ留められなくなってきているのです。
また事業側でも、既存顧客との関係を強化・継続することが、収益の安定に繋がるという考え方になっています。
つまり、一度売ってしまえば後はどうでもよいのではなく、継続してずっと関係を繋ぐことが必要なビジネスが多くなっているのです。
カスタマーサクセスという概念が注目されるようになったのは、モノやサービスの販売形式が、売り切り型からサブスクリプション型へと移行してきた社会の流れと密接です。
前述にある、「既存顧客との関係を強化・継続すること」が最も重要であると言えるビジネスがサブスクリプション(定額制)ビジネスです。
サブスクリプションビジネスは、顧客から定期的に収益が得られるため、顧客が増えるほど収益基盤は安定します。
しかしこのサブスクビジネスは、競合が多くなるほど、他社への乗り換えも容易になってしまうので、常に、解約の防止と継続率がアップが生命線となります。
ここで、カスタマーサクセスの考え方が大切になります。
解約防止のために、単に顧客を説得したり、解約しにくいような仕組みを用いたりするのは、情報化社会となった現代では逆効果とも言えます。
また、単に顧客自身の不満を受け止めるだけでは、これも顧客自身の感覚によるものなので、前述のように、”次”がなければ満足度は徐々に失われ、その間に競合との比較をしてしまいます。
カスタマーサクセスでは、顧客自身も気づいていないような利益や成功を提供していくことで、顧客をつなぎ止めようという考え方です。
「結果にコミット」というキャッチフレーズで一世を風靡したライザップ。
コミットとは、英語の「Commitment(コミットメント)」の略で、「約束」や「責任」などという意味があります。
実際に”カラダが変わった”ことを強くアピールすることで、多くの人の関心を集めましたが、これは当たり前のようで、今までのフィットネスビジネスにはなかった(少なかった)ことなのです。
またこのようにカラダが変わることは、本人の意思による部分が大きく、「自己責任」と考えることが企業側と顧客側の両方にあったでしょう。
それをカスタマーサクセス(=顧客の成功)を提供することをサービスの軸に置いた点が画期的であり、顧客側の意識も「成功が対価で手に入る」というものに変えたのです。
これが、それまでフィットネス業界に大きく欠けていた”カスタマーサクセス”の部分でした。ダイエットやボディメイク、健康を目的にフィットネスを始めようと、フィットネスクラブに入会する人はいつの時代も多くいましたが、今までの多くのフィットネスクラブは、そのための「場所」や「プログラム」を提供するのみで、それを実行するのは会員の意志に委ねられていました。
ここで、結果(=顧客の成功)を「ダイエットやボディメイクの目標達成」とするならば、その結果については達成できないことを想定して運営されているような部分もありました。
もちろん、それがすべて悪いわけではなく、今でもそのようなクラブはたくさんあります。自由に運動できる「場所(スペース)」、楽しく参加できる「プログラム」、交流できる仲間などの「コミュニティ」、明るく丁寧なスタッフから得られる「ホスピタリティ」などに満足する会員は多いのです。
これらの要素は、確かにクラブに継続的に通う理由にはなりやすいのですが、では実際に体重がどのくらい落ちて、スタイルが良くなって、それが対価(会費)に見合うかというと、よっぽど自主性の高い人でないと結果がでないことが多いものです。
そして、先に述べたように、この「結果が出ないこと」が想定されていたことが、これまでの「顧客満足」と「カスタマーサクセス」の違いになっていきます。
多くのフィットネス施設のビジネスが「継続利用してもらうこと」が収益の軸であることから、継続してもらうためのサービスを考え、同時にそれは顧客(会員)が満足するものでなけれならないとは考えているはずです。ただ、「顧客満足」としてしまうと、その範囲は感覚・感情的な部分含めて広くなり、「カスタマーサクセス」は、より具体的に顧客にとっての利益や幸せを生み出すこと、という違いがあります。