製造から販売まですべて自社のルートで行うビジネスモデル、D2C。近年では日本でも、コスメ、食品、アパレルなどさまざまな業界で、D2Cモデルを採用して躍進するブランドが数多く登場しています。
主に自社サイトやSNSなどをインターネットを介して商品を販売し、顧客とのコミュニケーションにもデジタル技術を活用しているのがポイントです。
D2Cとは「Direct to Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」の略で、企業が企画・製造した商品を小売り(卸売り)企業を介さずに消費者に直接販売するビジネスモデルのことです。
ブランドが拡大した結果として小売店に並ぶようになるブランドもありますが、独自の販路を持ってスタートしたブランドをD2Cとして捉えています。
自社の流通システムを持つ企業・ブランドとしては、アパレル業界において、製造小売りと言われるシステム「SPA(Speciality Store Retailer of Private Label Apparel)」という形態が従来から存在しています。ブランド例でいうと、SPAの名前の由来でもある米国のGAP、日本ではUNIQLOや無印良品がこれにあたります。
D2Cと呼ばれるブランドが、SPAと違う点は、販売やPRにデジタル技術を駆使して、資金や人件、時間などの効率化を図っている点だとされています。
流通における中間コストを省くことに加えて、広告やPR、コミュニケーションなどのマーケティング領域でもインターネットに慣れ親しんだ世代と効率的に繋がっています。
直営店のとしての実店舗を持たないことで小資金でもスタートできることで、既存の業界慣習によらない起業や、ニッチな分野でのブランドでも成功する例があることも特徴です。
またインターネットからスタートすることは、経営の効率化だけでなく、インターネットに慣れ親しんだ若者世代(Z世代など)に浸透しやすい利点もあります。
実店舗をもつブランドの場合でも、それらはいわゆる“売らない店”としてブランドの認知拡大や体験の場となっていることが主流です。
日本で成功しているD2Cブランドをピックアップします。
2015年のスタート以来、成長を続けている人気シャンプーブランド。今ではドラッグストアやバラエティショップでも販売されている。
2013年にスタートしたメンズスキンケアブランド。インフルエンサーの活用などを通して、SNSで話題となった。
日本初のパーソナライズヘアケアサービス。10の質問に答えるだけで、ひとりひとりの髪質にあわせてカスタマイズしたシャンプー&トリートメントを提案してくれるサービス。
▶PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティーアップ)
ビューティー系動画メディア「DINETTE」から生まれたD2Cコスメブランド。第一弾のまつ毛美容液ローンチを皮切りに、スキンケアからコスメまでラインナップの幅を広げている。
カラダや生活に必要な栄養素を、野菜を中心とした200種類以上の食材から組み合わせたパーソナルフードとして届ける。季節や気分にあわせて、スムージー、スープ、ホットサラダから好きなものを組み合わせて提供。
健康的でおいしい食事を冷凍の状態で届ける。自社のシェフと管理栄養士がメニューを開発し、全てのメニューが糖質30g以下、塩分2.5g以下であることが特徴。
様々な人気レストランで活躍してきた田村浩二シェフが立ち上げたチーズケーキブランド。販売数量をごく少数にして、週2日程度で日時を決めて販売するスタイルで、発売開始時間になると一気に売り切れてしまうほどの人気。
オーダーのスーツやシャツをネット通販で購入できるブランド。まずは店舗で採寸後、生地とアイテムからWEB上でオーダーメイドができる。
身長150cm前後の小柄女性のためのアパレルブランド。InstagramやYouTubeで積極的に発信し、小柄女子のコミュニティを作り出すことに成功している。
D2Cブランドは、顧客との距離が近いことから顧客の要望をダイレクトに収集できるのがマーケティングの強みになります。
顧客の声を商品やマーケティング施策に積極的に反映させ、新規顧客はもちろん、SNSなどの情報伝播によって新規顧客の獲得に繋げているブランドが多くあります。
コロナ禍によって実店舗の運営が厳しさを増す中、小規模から事業をスタートさせることができ、データ活用で活路を見出せるビジネスモデルであることから、オリジナルブランドが生まれやすい仕組みであることは確かです。しかし、誰でもが成功できるわけではなく、ユーザーの共感をうまく生み出し、ブランドをファンを作り、ファンとの絆を深めながら商品やサービス進化させ続けることが求められています。